らぬぞ」
 旦那とかお侍とか、さかんにおだてられて、若党儀作、ちょいといい気持になってしまった。いっぱしの武家らしく、言葉使いも急に角ばってきたのは、与吉のおべんちゃらが即効を呈したのでございましょう。
 人間の弱点。
 それを見ぬいている与吉は、
「マアマアそうおっしゃらずに。持ち逃げしようとは申しません。旦那の家来とおぼしめして、あっしにお荷物をかつがせておくんなせえ」
 とめる暇はなかった。
 つつしんで壺の包みを持って、与吉のやつたちあがってしまったから儀作もしかたない。ナニ、すこしでもあやしいふしが見えたら、そのときとっておさえればいいのだと、
「おもしろい町人だ。では、ソクソクまいるとしようか」
 いつも家来の身が、急に家来ができたのですから、にわかにそっくりかえって、茶店をあとにしました。
 袖すり合うも他生《たしょう》の縁。
 つまずく石も縁の端。
 いろいろ便利な言葉がある……この場合、与吉にとって。
 そんなことをベラベラ弁じたてながら、与吉は儀作から一歩さがって、お追従たらたらについてゆく。
 もとより、気を許しはしない。
 変なそぶりが見えたら、抜きうちに……儀
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