作が心を配って行くと、
「オヤッ! あれはッ!」
 不意に手をあげて、与の公、前方《まえ》を指さした。
「なんじゃ! 何が見える」
 儀作がつりこまれて、爪立《つまだ》ちして道のむこうを望み見たとき。パッともと来たほうへかけだしたんです、与吉の野郎。

   鎧櫃《よろいびつ》


       一

 あれから、何日たったろう。
 それとも、もう十何日?
 とにかく……。
 今になっても、柳生源三郎が現われないところをみると、あのとき、あの穴の底で三方子川の水にひたされて、お陀仏になったにきまっている――。
 とは、峰丹波一味の、たれしも思うところ。
「ああ、自分ほどあわれなものがあろうか。恋しいと思う人を、あんな手段で亡きものにしなければならなかったとは」
 かってな人もあったもので、こんなことを考えてひとりふさいでいるのは、司馬十方斎先生の御後室、お蓮様。
「でも、あの方もあまり強情すぎたから、こんなことになったんだわ」
 胸に問い、胸に答えて、このごろは部屋にとじこもって考えこんでばかりである。
 ふしぎなのは、同じ屋敷内の奥まった部屋部屋にがんばっている安積玄心斎、谷大八等、
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