ずさ》の山々、イヤ、絵にかいたような景色とは、このことでしょうナ。海てエものは、いつ見ても気持のいいもので」
一人でしゃべりちらして、海にみとれるふう……かたわらにある儀作の飲みかけの茶碗をとって、口に持ってゆこうとする。儀作がおどろいて、
「ああもしもし、それは私の茶碗だが――」
「オヤ! そうでしたね。イヤ、これはとんだ粗忽《そこつ》を。だがね、あなた様のお飲みかけなら、あっしは、ちっともきたないとは思いません。イエ、お流れをちょうだいいたしたいくらいのもので」
「何をつまらんことを言いなさる。ソレ、お前さんの茶碗は、ここにあるよ」
二
「なるほど、あらそわれねえものだ。あっしの茶碗は、ちゃんとここにあらアヘヘヘヘ」
なんかと与の公、何があらそわれねえものなのか……しきりに感心している。
ガブリとひとつ茶を飲んで、何やかや一人で弁じだした。
口前《くちまえ》ひとつで人にとりいることは、天才といっていいほどの鼓の与吉。
武家奉公で世間もせまく、年も若い儀作は、これが機会《しお》となって、うまうままるめこまれたと見える。
「旅は道づれ、世は情けてえことがあり
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