としていると、合羽姿もりりしく、手甲脚絆、旅のこしらえをすました若党儀作が、やっと人をかき分けて、主水正に近づき、
「御家老、それでは私は、これからただちに伊賀のほうへ――」
「ウム、急いで発足してくれ。道中気をつけてナ」

       二

 東海道を風のようにスッ飛ぶ超特急燕、あれでもおそいなどと言う人がある。もっとも、亜米利加の二十世紀急行、倫敦《ロンドン》巴里《パリー》間の金矢列車《ゴールド・アロウ》、倫敦エディンバラ間の「|飛ぶ蘇格蘭人《フライング・スカッチマン》」……これらは、世界一早い汽車で。
 人間には、欲のうえにも欲がある。その欲が、進歩を作りだすのですが。
 どこへゆくにもスタコラ歩いた昔は、足の早い人がそろっていたとみえます。
 早足は、修練を要する一つの技術だった。
 歩きじょうずの人の草鞋《わらじ》は、つまさきのほうがすり切れても、かかとには、土ひとつつかなかったものだそうで、つまり、足の先で軽くふんで、スッスッと行く。
 呼吸をととのえ、わき眼をふらずに、周囲の風光とすっかり溶けあって、無念無想、自然のひとつのように、規則正しく歩を運ばせる。
 この早足に
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