は樹下民部《じゅげみんぶ》。
 神輿《みこし》の通りすじは往来を禁じ、町屋に桟敷《さじき》がかかる。幕|毛氈《もうせん》きらびやかにして、脇小路小路は矢来にて仕切り、桜田|辺《へん》の大名方より神馬をひかれ、あるいは長柄の供奉《ぐぶ》、御町与力同心のお供あり、神輿三社、獅子二かしら。法師武者とてよろいを着したる馬上の衆徒十騎。出し屋台、ねり物。番数四十六番。町かずおよそ百三十余町。一の鳥居のまえへ詰《つ》め、お通り筋は、星野山より半蔵御門へ入り、吹上竹橋御門、大下馬《おおげば》より常盤橋、本町、十間店本石町、鉄砲町、小船町、小網町、れいがん橋を過ぎ、茅場《かやば》町お旅所にて奉幣《ほうへい》のことあり、それより日本橋通町すじ、姫御門を抜けて霞ヶ関お山に還御《かんぎょ》也。隔年《かくねん》、丑《うし》卯《う》巳《み》未《ひつじ》酉《とり》亥《い》。
 ……とあって。
 きょうのお祭りは、日|柄《がら》よし。幸いの好天気、まことに押すな押すなの人出である。
 警護の者が往来往来と人を払ってくるうちに、だんだんと曳《ひ》いて来る三十番雉子町の花車《だし》、それに続いて踊り屋台と順に乗りくみ、そこへ神田橋のほうからも御上覧がすんで三十五番三十六番とワッショイワッショイ! で繰りこむ――大変なさわぎ。
 おどり屋台の滝夜叉姫《たきやしゃひめ》。
 お顔の赤い山王《さんのう》のお猿さん……。
 ふとうしろに声がするので、お艶は、何ごころなく振り返ってみた。
 見物人のなかで、町人達がしゃべりあっている。
「なア由公《よしこう》。たいしたものだなあ!」
「そうよ。だがナ、この祭礼の日に、本所へお捕方が向かったっていうじゃねえか」
「へえい! 本所のどこへ?」
「鈴川という旗本のやしきだとよ」
「アアあの化物屋敷か。それなら何もふしぎはねえやな」
「なんでも、東海道三島の宿で、浅草三間町の鍛冶屋富五郎てエ野郎が飯盛《めしもり》の女を買って金をやったとこがお前、その小判がまえから廻状のまわっていた丸にワの字の極印《ごくいん》つきだからたまらねえや。すぐに両替屋の触帳《ふれちょう》から足がついてナ、その鍛冶屋を江戸へ送ってしらべてみるてえと、なんとかてエ婆さんが鈴川源十郎の手から持って来たことがわかった。その丸にワの字は出羽様の印で、いつかそら、銀町の棟梁伊兵衛親方が相川町で奪《と》ら
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