追う船も、追われる船も、おなじ天候の支配を受けて、ただ追い、ただ追われているのみだった。
 先の船には弥生。
 あとの船には栄三郎。
 どんな思いで、たがいの帆を望み、綱のうなりを聞き、鴎《かもめ》のむれを見たことであろう。
 昼は、雲の峰。
 夜は月のしずく。
 そうして。
 八幡の宿。
 王井《おうい》。
 畦戸《あぜと》の浜。
 大貫。佐貫の村々。
 富田岬をかわして、安房《あわ》の勝山、走水《はしりみず》。
 観音崎から、那古、舟形《ふながた》。
 三崎……城ヶ島。
 このあたりのたびたびの通り雨、両船にて、茶碗、盥《たらい》等、あらゆる凹器を持ち出し、あま水を受く。飲料なり。
 それより北条の町の灯。
 九重《ここのえ》安信神社の杉森。
 野島崎。しらはま。和田の浦。江見。安房《あわ》鴨川。東浪見――。
 そと海に出て、九十九里浜。
 松尾。千潟《ちがた》。外川《とがわ》。
 屏風《びょうぶ》ヶ浦より犬吠《いぬぼう》。
 飯沼観音のながめ。
 大利根を左、海鹿《あじか》島を右に、鹿島灘《かしまなだ》へ出て銚子、矢田部。
 北上して――。
 大洗から磯浜、平磯、磯崎……磯前《いそざき》[#「磯前」は底本では「礎前」]神社あり。
 つぎに阿漕《あこぎ》、松川磯の小木津。
 関本。勿来《なこそ》。小名浜。江名。草野。四ツ倉。竜田。夜の森。浪江。
 このへんより松川浦にかかって小高、原の町、日立木の漁村つづき。
 仙台湾。
 名にし負う塩釜《しおがま》神社に近く、右手の沖は、鮎川のながれを受ける金華山《きんかざん》。
 怒濤《どとう》……。
 江戸を出て九日目の夕ぐれだった。
 午すぎからあやぶまれていた空模様は、夜とともに大粒な雨をおとして、それに風さえくわわり、二つの船は見るみる金華山沖へ流れていったが!
 やがて。
 真夜中ごろであろうか、一大音響をたてて船が衝突すると、あらしをついて栄三郎、泰軒が、左膳の船中へ乗り入り、まもなく月輪の三士をことごとく斬りふせたとき! かなわぬと見た左膳。
 ただちに手にした夜泣きの大小を海中へ投じたが、すかさず! 栄三郎が水へもぐって、沈まんとして流れてきた二刀を拾い上げ、船へ泳ぎ戻った。
 そして!
 その二剣を、船中に倒れていた弥生の手に握らせた時、ニッコリした弥生は、それを改めて栄三郎へ返してただひとこと。
「どうぞ
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