しいことはしらないが、なんでもみなが命がけの大さわぎをしてきたその本尊《ほんぞん》のふたつの刀を、ここに入手したらしいようすなので、かなわぬ恋の意趣返しに、ひとつ横あいからふんだくってやれ……どうせこの家へは、もう誰も帰ってはこねえのだ。いわば空家、かたなを取ったうえで存分にじらし謝まらせ、さていうことをきかせてやろう! こう豆太郎なみの智恵にそそのかされたのであろう、やにわに隠れていた風呂場の隅から飛び出したかれ、
「もらったぞ!」
一こえどなるより早く、パッ! 夜泣きの大小を弥生の手からかすめとって、同時に小廊下づたいに台所へ跳びおりたかと思うと、そのまま水口の戸障子を蹴倒して戸外へ走り出た。
「ああ――!」
としばし、わがことながらポカンとしていた弥生、秒刻をおいて気がついて見ると、じぶんの身長より高いくらいの陣太刀二|口《ふり》を抱えた豆太郎が、森の木のあいだをくぐり抜けて、みるみるそれこそ豆のように小さくなっていくから、はじめて事態の容易ならぬを知った弥生、呆然から愕然へ立ち返るとともに、
「おのれッ!」
一散に後を追いだした。
一丁。
二丁。
昼なお小暗い子恋の森の真ん中である。
斧を知らない杉、楓《かえで》、雑木の類がスクスクと天を摩《ま》して、地には、丈《たけ》なす草が八重むぐらに生いしげり、おまけに、弥生にとってぐあいの悪いことは、豆太郎がその草にのまれて、どこにひそんでいるのか皆目《かいもく》見当《けんとう》のつかないことだ。
ただ、ザワザワと揺れる草の浪を当てに進む、と果たして!
何か焚き火の跡らしく黒く草が燃えて、いささか開きになっている地点、両手に雲竜二刀を杖について立っている豆太郎を見いだした。
「ヘッヘッヘ! とうとうここまで来たな!」
豆太郎がうめいた。
弥生は無言――そろり、そろりと近づく。
と、
再び刀を擁《よう》して草へ跳びこまんず身がまえをつくった豆太郎、
「サ! あっしがこの森の中を駈けまわっているうちゃア、泣いてもほえても、お前さんの手には負えませんよ。ネ! あっしも男だ! いい出したことが聞かれねえとあれア、仕方がねえ。この刀をもらってずらかるばかりさ……それとも弥生さん、ここで往生して眼をつぶるかね? はっはっは、これが舞台なら、サアサアサア――とつめよるところだ!」
いいながら、今にも身を
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