ひるがえして樹間へ走りこみそうにするから、刀を持って行かれてはたまらない弥生が、さりとてこの人猿に自由《まま》にもなれず、進退きわまって立ちすくんでいると、その弥生のようすを承諾の意ととったものか、つかつかとかえってきた豆太郎、
「弥生さん!」
二剣を右手に、左手をまわして弥生のからだへ掛けようとした。
思わず、身をすくませる弥生。
嫌らしくまつわりつく一寸法師。
その瞬間だった。
声がしたのである……近くに!
「おうッ! ここかッ! ウム刀も! やッ! 娘もいるなッ!」
と! 言葉といっしょに。
独眼刀痕の馬面が、ヌッ! と草を分けて――
水や空
「やいッ!」
乾雲を失った左膳、一腕に大刀を振りかぶって立ち現れた。
それと見るより、早くも豆太郎、弥生を棄てて二剣をかきいだき、みずからは、つと体を低めて懐中を探っている。
得意の手裏剣をとりだす気。
左膳の嗄《か》れ声が、またもや森の木の葉をゆすった。
「汝《うぬ》ア化物かッ? 化物にしろ、人語を解《かい》したら、よッくおれのいうところを聞けッ! いいか、その二つの刀とこの娘はナ、去年の秋の大試合におれが一の勝をとって、ともに賞としてもらい受けたのだ、とっくにおれのものなのだ」
豆太郎は、口をひらかない。ただ、野犬のように白い歯をむき出して、突如、躍りあがるがごとき身ぶりをしたかと思うと、長い腕がブウン! と宙にうなって、紫電《しでん》一閃!
ガッ! あやうく左膳の首を避けた小柄、にぶい音とともにうしろの樹幹にさし立った。
「ううむ、こいつウッ! やる気だな」
うめいた左膳さっと、足をひいたのが突進の用意、即座に、左膳、半弧をえがいて豆太郎の素っ首を掻っ飛ばそうとしたが、土をつかんで身をかわした豆太郎、逃げながらの横投げ、錦糸、星のごとく、飛翔《ひしょう》して左膳の右腕へ命中した。
が、
あいにくと左膳には右腕がない。
で、右袖に突きささった短剣はそのまま一、二寸の袖の布地を縫ってとまった。
……のもつかの間!
つづいて四剣、五の剣――と皓矢《こうし》、生けるもののごとく長尾をひき、陽に光り風を起こし、左膳をめがけて槍ぶすまのようにつつんだ……ものの!
丹下左膳、もとより凡庸《ぼんよう》の剣士ではない。
タタタタッ! と続けざまに堅い音の散ったのは、左剣上下左右に動転
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