から板をはがしたものであろう。ふたりとも襷《たすき》に鉢巻、泰軒先生までが今夜は一刀を用意してきて、すでに鞘を払っている。
「起きろッ! 夜討ちだアッ!」
どなりつつ、のけぞりながら左膳一振、早くも乾雲の皎刀《こうとう》を構えた左膳、顔じゅうを口にして二度わめいた。
「起きねえかッ、月輪ッ」
が!
同時に、
ウウム……断末魔のうめき。
泰軒の刀鋩《とうぼう》が、轟玄八のひばらを刺したのだ。
栄三郎は、蒼白いほほえみとともに、もうノッソリと穴から部屋の中へあがっていた。
立ち樹が揺れて、梢が屋根をなでる音――。
夜着のうえから一突きにされて、声もあげ得ずに悶絶した轟玄八のようすに、白河夜船をこいでいた他の三人も、パチリと眼がさめてとび起きた。
見ると!
すっかり身じたくをした諏訪栄三郎に蒲生泰軒、ともに、あんどんの薄光を受けて青くよどむ秋水《しゅうすい》を持して、部屋の左右に別れているから、三人、帯をしめなおすまもない。
てんでに刀へ走って、鞘をおとした。
左膳は?
と気がつくと、床下づたいに広庭へおびき出すつもりか。ソロリソロリと後ずさりに、いま、泰軒栄三郎の出てきた根太板の穴のほうへ近づきつつある。
荒夜の奇襲。
つとに満身これ剣と化している栄三郎、声――は、胆《たん》をしぼって沈んでいた。
「丹下どの?……今宵は最後とおぼしめされい!」
左膳は、一眼を細めて笑った。
「この暴《あ》れじゃアどうドタバタ騒いでもそとへ物音の洩れっこはねえ。なア若えの、ゆっくり朝まで斬りあうぞ」
泰軒が一喝した。
「多弁無用! 参れッ!」
と……。
これが誘引した乱刃|跳舞《ちょうぶ》。
真っ先に剣発した月輪軍門の次席山東平七郎、陀羅尼将監《だらにしょうげん》勝国の一刀にはずみをくれて、
「えいッ!」
わざと空《から》気合いを一つ投げて、直後! 泰軒めがけて邁進《まいしん》すると同時に、
ツ――ウッ!
横に薙《な》いだつるぎの端に、あわよくば栄三郎をかける気。
……であったろうが!
そこは秩父《ちちぶ》に残存する自源流をもっておのが剣技をつちかいきたった泰軒先生のことだ。
自源流は速を旨とし、いちめん禅機に富む。
この平七郎|雪崩《なだれ》おちの手さばきを知察した泰軒、われからすすんで平七郎の剣をはねるや、体を左に流して栄三郎を
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