り、そこは、こんなことには特に頭の働くお藤なので、おや! 似ているぞ! と看《み》てとると同時に、あとをつけて、いよいよ弥生が、男装して小野塚伊織を名乗り、そのひそんでいる家まで突きとめたのだった。
 それをお藤は、いま源十郎へしらせているのだ。
「その儀は、おれより左膳へ、じかに教えてやったらよいではないか」
 苦笑を浮かべて源十郎がいう。
 お藤はせせらわらった。
「どこの世界に、自分の恋がたきの居どこを、わざわざ知らせてやるやつがあるもんですか。あたしゃ、それよりも左膳様が憎らしいんですよ。エエ、憎くて憎くてしょうがありません。だから殿様、丹下様があなたといっしょにお艶さんの行方《ゆくえ》を探すなら弥生さんのいるところを教えてやろうとおっしゃりさえすれば、弥生さんに首ッたけのあの人のことですもの、きっと眼のいろを変えてお艶さんをたずねまわるに相違ありませんよ。おもしろい芝居。ホホホホ、ねえ殿様、いかがでございます」
 鈴川源十郎、黙って煙草を輪に吹いている。

 お藤のはらでは。
 左膳へ人づてに弥生の住所を知らせてやれば、かれはすぐさま、とるものもとりあえず子恋の森へ駈けつけるに違いない。そうすれば先には、五人組をはじめ豆太郎というお化け野郎までそろっていることだから、きっと左膳は窮地におちいって、ひょっとすると乾雲はおろか、生命までも失うようなことになるかも知れない――それがいまの自分としては、あくまでもこの恋をしりぞける左膳に対して何よりの、そして唯一の報復であると、お藤は固く思いこんでいるのだ。
 で、躍起となって、源十郎にすすめている。
「あたしも、あんな隻眼隻腕のお国者に馬鹿にされどおしで、このまますっこんじゃいられませんや。こうして丹下様をひどいめにあわして仇敵《かたき》さえとってしまえば、あたしもやばい身体ですからしばらく江戸の足を抜いて、どこか遠くへ長いわらじをはくつもりでおりますのさ。まあ、これが櫛まきお藤のお名残り狂言でございますよ」
 源十郎も、しだいに乗り気になって、
「それで、お艶を探し出す助力と交換に、弥生の居所を知らせてやろうともちかけるのだナ」
「ええ。そうでございます。殿様だってお艶さんのいどころは気になっておいででしょう?」
「ウム。そりゃアまあそういったようなものだが――」
「だから、でございますよ、弥生さんの所在ととり
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