んて、そんなケチな料簡の与吉じゃアございません」
「大きく出たな」
「しかし、ですね。鈴川様はいまピイピイ火の車……」
「いつものことではないか」
「それが殊にひどいんで、とても知らせてやったところで一文にもなりませんから、そこでこちら様へただちに申しあげるんでございますが、ねえ丹下様、この女の所在ととっかえっこに、ひとつ鈴川さまに働かせてみちゃアどうでございます」
「ハハハハ、罪だな」
「なあに、罪なことがあるもんですか。こないだの晩だって、先にいっしょに瓦町へ物見に行ったときなんざア、ポウッと気が抜けたように、お艶のことばかり口走って歩いていたくらいですから、そのお艶の居場所がわかった、ついては、なんとかして栄三郎から刀を奪ってくれば、すぐにもそこを教えよう――こういってやりゃア、今はお艶のことでフヤフヤになっていますが、あれでも鈴川様は去水流の名人ですから、お艶ほしさの一念からきっと栄三郎を手がけて坤竜をせしめて参りますよ。あっしアこいつア案外うまくいくことと思いますが、丹下様、いかがで?」
「ウム、そうだな、折角の援軍もいまは四人に減って、おまけに栄三郎には泰軒、そこへもってきて五梃駕籠のほかに、かの手裏剣づかいの人猿も現れ、おれ達にとっては多難なときだ。こりゃア一番、てめえのいうとおり、お艶を囮《おと》りに、源十をそそのかして、コッソリ瓦町へ放してやるとしようか」
はなれの縁で左膳と与吉が額部《ひたい》をよせて、こうヒソヒソささやきあっている時に!
折りも折り。
庭をへだてた化物屋敷のおもや鈴川源十郎の居間では。
ぴったりと障子を閉《し》めきって、あるじの源十郎とひとりの年増女《としま》が、これも何やら声を忍ばせて、しきりに話しこんでいる最中。
年増《としま》……とは誰?
と見れば。
めずらしくも、櫛まきお藤である。
「だからさ、お殿様、じれッたいねえ。何もクサクサ考えることはないじゃありませんか」
今までどこにもぐっていたのか、眼についてやつれて、そのかわり、散りかねる夕ざくらの凄美《せいび》を増した櫛まきの姐御、ぽっと頬のあからんでいるのに気がつけば、ふたりのあいだにのみ干された茶碗酒がふたつ。
じまんの洗い髪――つげの横ぐし。
大きな眼を据え顔を傾けて、早口の伝法肌《でんぽうはだ》、膝をくずした姿も色めき、男を男と思わぬところ、例
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