じゃねえ。しかし、源の字は当てにならず、おれとともにたった五名の同勢か。ウム! それもかえっておもしろかろう! おれにはコレ、まだ乾雲という大の味方があるからな……」
 ひとり述懐を洩らしつつ左膳、みずからを励ますもののごとく、タッ! と陣太刀赤銅の柄をたたいたとき、
「チェッ! よくあきずに降りゃアがる!」母屋《おもや》から傘もなしに、はんてんをスッポリかぶって、ころがるようにとびこんで来たのは、ひさしぶりにつづみの与吉だ。
 降りこめられて、しょうことなしに離室いっぱいに雑魚寝《ざこね》している月輪の残党四人をのぞきながら、
「ヒャッ! 河岸にまぐろが着いたところですね」
 と相変わらず、江戸ぶりに口の多い与の公、はじめて気がついたように左膳に挨拶して、
「お! 殿様、そこにおいででしたか、注進注進」
「なんだ?」
「なんだ、は心細い! いやに落ち着いていらっしゃいますね……ハテどうかなさいましたか。お顔のいろがよくないようですが――」
「何をいやアがる!」左膳は相手にしない。「てめえもあんまり面《つら》の色のいいほうじゃアあるめえ。儲《もう》けばなしもないと見えるな」
「ところが殿様! 丹下の殿様! ヘヘヘヘヘ、ちょいと……」
「何?」
「ちょいとお耳を拝借」
 苦笑とともに左膳、腰をかがめて与吉の口に暫時《ざんじ》、耳をつけていたが、やがて何ごとか与吉のことばが終わると、ニッと白い歯を見せてほくそえんだのだった。
「そりゃア与の公、てめえ、ほんとうだろうナ」
「冗談じゃアない。何しにうそをいうもんですか」
 与の公はいきおいこんだ。
「ほんと、ほんと、あのお艶……、母屋《おもや》の殿様がゾッコンうちこんでいなさる女《あま》っこが、深川で芸者に出ているてエこたあ、誰がなんといおうと、お天道さまとこの与吉が見とおしなんで――へえ、正真正銘ほんとのはなしでございます」
「そうか」
 と一言、左膳はなぜかニヤリと笑ったが、
「ふうむ。そりゃアまあそうかも知れねえが、なんだって手前《てめえ》は、そいつを肝心の源十郎へ持っていかねえで、そうやっておれに報《し》らせるんだ? お艶のいどころなんぞ買わせようたって、おれア一文も払やしねえぞ」
「殿様ッ! 失礼ながら駒形の与吉を見損《みそこな》いましたネ。こんなことを、筋の違うあんたんとこへ持ちこんで、それでいくらかにしような
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