り、打ち返して肌に柾目《まさめ》をつけ、ほどよいころから沸《わ》かし延べの手順にかかる。
わかし延べは、束《たばね》である。
今までバラバラの鋼だったものを、これで一本の刀姿にまとめ、素延《すの》べに移る。
素延《すの》べは、地鉄のむら[#「むら」に傍点]をなおし、刃方《はがた》の角《かど》を平め、鎬《しのぎ》のかどを出す。
火造り――せんすき[#「せんすき」に傍点]ともいい、はじめて鑢《やすり》を用いていよいよ象《かたち》をきわめる。
つぎに。
反《そ》りをつけ、もっとも大切な焼刃にかかるのだが、そりも焼刃も各流相伝になっていて、それによって艶や潤いに大差が生ずる。
これに要する土は、黒谷《くろたに》のものがよしとされていること、あまねく人の知るところだ。
この反りと焼刃の工程。
もとより刀剣の胎生《たいせい》に大切なところで、これによって鋭利|凡鈍《ぼんどん》も別れれば、また鍛家の上手下手《じょうずへた》もきまろうというのだが。
それよりもいっそう重大なのが、次順の湯加減、一名|刃渡《やいばわた》しである。
やいばわたし……鍛刀中の入念場《にゅうねんば》。
まず水槽に七、八分めばかりの清水をたたえ、火床には烈火をおこし、水は四季に応じてその冷温を加減する――これすなわち湯かげんの名あるゆえん。
春、二月の野の水。
秋、八月の野の水。
これと同じくすることがかんじんだ。そうしてしたくができれば、本鍛冶が、※[#「金+示+且」、第3水準1−93−34]元《はばきもと》から鋩子《ぼうし》さきまで斑《まだら》なく真紅に焼いた刀身を、しずかに水のなかへ入れるのだが、ここが魂《たましい》の込《こ》め場所で、この時水ぐあい手かげん一つで刃味も品格も、すべて刀の上《じょう》あがり不あがりが一決するのだから工手は、人を払って一心不乱に神仏を念ずるのがつねだった。
こうして、やいば渡しも終われば。
荒砥《あらと》にかけて曲りをなおし、中心《なかご》にかかって一度|砥屋《とぎや》に渡し、白研《しらとぎ》までしたのを、こんどはやすりを入れて中心を作る。この中心ができあがったうえでさらに研《と》ぎをしあげ、舞錐《まいぎり》で目貫《めぬき》穴をあけ銘を打ち、のち白鞘《しらざや》なり本鞘《ほんざや》なりに入れて、ようよう一刀はじめてその鍛製の過程を脱する―
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