よう》に合点をした富五郎親方。
「わかりました、おさよさん。お前さんの心はよっく理解がつきましたよ。なアるほどネ、子を思う親の誠に二つはねえとは、よくいったもんだ。お前さんはつまりお艶さんにこのうえの苦労をさせたくねえ。なんとかして鈴川様へさしあげて、すこしでも楽な身分にしてやりてえという腹でいっぺえで、いってみりゃア自分のことなど二の次なんだろう。そうなくちゃアならねえ……うム……親ッてえものはありがてえもんだなあ! おらあおさよさん、この年になって初めて親の恩を知りましたよ。あああ、焼野《やけの》の鶴に夜のきぎす――」
 なんかと富五郎、何を思い出したのかそこらのお寺の説法にでも聞いたらしい文句を並べだしたりはいいが、どうもいうことがさかさまである。
 にもかかわらず。
 涙っぽいその調子に誘われて、おさよが思わずさしうつむくと、うら口のおしんまでが湯帰りの濡れ手拭とまちがえて、雑巾《ぞうきん》で眼じりをこすっている。
 春の日の午さがりだけあって、いかにも間の抜けた愁嘆場《しゅうたんば》……。
 なまあったかい風が、ほこりを舞わせて家をつつむ。
 世の中があくびをしているよう……いかにも眠いもの憂さである。
 おさよが、赤くなった眼をあげた。
「では、瓦町へ出かけて行ってお金を渡し、栄三郎さんから離縁状を取って来てくださるというんでございますね」
「そうともサ! お前さんの言うとおり、世の中は真直ばかりでもいかねえ。おまけに、手前の女房を食わせることもできずに追ん出てゆかれた栄三郎さんだ。そりゃア先様はまた先様で、なんのかのとほかに心をつかうこともあるんだろうけれど、なあに先方の都合なんざア聞く耳もいらねえ。これからすぐに瓦町へ行って栄三郎さんをおだて、ニッコリ笑って縁切り状を書かせて来てみせるから、お前さんはマアわしに任《まか》せて、なんの心配することアねえやな、今におしんも帰ってくるから、ユックリ話して休んでいなさるがいい」
「ほんとに普段は勝手ばかり、用がなければおたずねもしないくせに、とんだ御迷惑なお願いをして――」
「マアいいとも、いいとも、そんなことは言いなさんな、勝手はお互いだ」
「恐れ入りますでございます」
「ナアニ! ところでもうおっつけかかあの帰って来る時分だが……畜生! 何をしてやがるんだろう? 碌でもねえ面の皮の引んむけるほど、おびんず
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