数条の血線、ながく闇黒に飛散して、兵衛はたちまちはりきっていた力が抜け、あやつり人形の糸が切れたように二、三度泳ぐような手つきをしたかと思うと、そのままガックリと地にくずれてのけ[#「のけ」に傍点]ぞった。
 思わぬ時に意外な伏勢!
 しかも、薄明の夜に防ぎようのない魔の手裏剣である!
 即座に、一同のあたまに電光のごとくひらめいたのが、あの、過ぐる夜半、本所化物屋敷の庭に突如として現われ、またたくまに二、三月輪の剣士を亡き者にしてはてた猿のような一寸法師と彼の投剣術だ……。
 なんじらは順次にわが手裏剣の的《まと》なり――。
 この威嚇《いかく》の文句も、いまだかれらの眼にこびりついている……そのやさき、こうしてなんの前ぶれもなく、小刀、どの方角からとも知れずに疾飛しきたって、またもや剣を取っては錚々《そうそう》たるひとりの同志を、まるで流れ矢にでも当たったように他愛なく射殺したのだから月輪の剣連、瞬間、栄三郎をも泰軒をも忘れて、ひとしく驚愕と畏怖にたじろいだ。
 事実!
 かのふしぎな、手裏剣手は岡崎兵衛を倒したのみにあきたらず今、夜はどこまでもその入神錬達の技を見せるつもりらしく、つづいて二の剣、三の剣と月光をついてシュッ! シュッ! という妖奇な音が、ながくあとを引いて木の間の空に走り出した。
 と思うと、
 ちょうどその時、刀を引っさげて、小剣来たる方を見さだめようとあたりを眺めまわしていた藤堂粂三郎の横腹へ命中して、粂三郎、二つに折れ曲がって傷口をおさえ、ウウム! と一こえ、うなり声もものすごく夜陰にこだまするが早いか、すでに彼は、ばったり土に仰向いて、空を蹴ろうとするように足を高く上げたのも、二、三度――まもなく草の根をつかんで静止……悶絶してしまった。
 そして!
 再びざわめき渡る月輪の一同へつぎの手裏剣! こんどは、燐閃、河魚《かわうお》のごとく躍って各務房之丞の鬢《びん》をかすめ、ガッシ! とうしろの樹幹に突き立ったから、ここに月輪の残士たち、はじめて短秒間のおどろきから立ちなおって、一団にかたまりあっていたのが、わアッ! と叫んで四方に散ずると同時に危険を実感したらしい首領軍之助のどら声が、指令一下、葉末の露を振るいおとしてひびき渡った。
「伏せ! 伏せ! ピッタリ腹をつけて土に寝ろ! 早く散って……早く!」
 これでようやく対策を得た月輪組
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