つめながら、思うのだった。
――芸者になった……のか!
これもよくよく考えあぐみ、身の振り方を思案しぬいたすえであろうが、芸者に! とはまた思いきったものだ。
それも、源十郎の爪牙から自らを守るため。
ひとつにはいっそう栄三郎をあきれさせ、あきらめさせるあいそづかしの策であろう――ウウム、いっそおもしろかろう! が、ただ……。
つとお艶は顔を上げた。
明眸《めいぼう》が露に濡れている。
「先生! つ、艶は、こんな風態《なり》[#「風態《なり》」は底本では「風|態《なり》」]になりましてございます。お恥ずかしい――」
「いや! はずるどころか、美しくて結構じゃ、うう、これは皮肉ではない。今も、しん[#「しん」に傍点]からそう思って見惚れていた、ハハハハ」
「お口のわるい……」
「しかしナ、どこで何をしようと、あんたは栄三郎どのの妻じゃ。それを忘れんように、栄三郎殿になり代わって泰軒がこのとおり頼みますぞ。稼業とはいえ、万一おかしなことでもあったら、仮りに栄三郎殿が許しても、この泰軒が承知せんからそのつもりでいてもらいたい」
「アレ先生、そんなことは、おっしゃるまでもなく艶は心得ております」
「それさえわかっておれば、わしも何も言うことはないが――」
と急に声を低めた泰軒、
「お艶どの、何か言伝《ことづけ》はないかナ?」
「はい」
お艶はもう哭《な》きくずれんばかり……。
「アノ、わたくしはいつまでも辛抱いたしますゆえ、どうぞ栄三郎様のほうを――」
「はははははは、お艶どの、このわしを泣かしてくれるな、はははは」
泰軒は、むりに笑って顔をそむけた。
その耳へ、何ごとかを訴えるがごときお艶のつぶやきが、低く断続して聞こえてくる。
意味の聴きとれない泰軒、腰をかがめてお艶に顔をよせ、しばらくは、なにかしきりにうなずきながら聞いていたが、
やがて、鬚だらけの顔がにっこりしたかと思うと、泰軒先生、喜色満面のていでそりかえった。
「うむ! そうか、そうか。やアめでたい! そりゃア何より……ワッハッハッハ! 早う栄三郎どのにしらせてやりたいが、今はそうもなるまい。しかし、でかしたぞ、お艶どの! あっぱれ、あっぱれ」
そして、なぜか火のようにあかくなっているお艶をのぞきこんで、泰軒先生ひとりで大はしゃぎだ。
「男か女か」
「まあ先生、そんなことが――」
お
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