助力に預りたい。たっての頼み――そちの剣能が所望なのじゃ。いかが?」
「困るなあ、そう急に攻められても、なにしろ殿様、あっしにとっちゃアまるで足もとから鳥の立つようなはなしなんでねエ」
「そこをなんとかいたして……」
「むりでさあ、どうも、あっしゃア小屋に縛られている身で、自分で自分のからだがままにならねえんだから」
「逃げろ!」
と強くささやいて弥生は人をはばかってあたりを見まわした。
堂のむこうに祭りのさざめきが沸きたつばかり――すこし離れたここらはひっそりとして人の気もない。
ハラハラと落ち葉が、ふたりの肩にかかる。
「ヘヘヘヘヘ、そりゃアおっしゃるまでもなく、これまでにだって再三逃げ出したことがありやすがね、どこへひそんだってこの不具じゃアすぐ眼についてひき戻されるんで……」
「よし! あくまで拙者らに与《くみ》するならば、言うにや及ぶ。りっぱにかくまってやろう」
「して、あっしの仕事てえのは、さっきおっしゃったあの人殺し稼業――」
「コレ、声が高いぞ! うむ、その代価として金銀は望み放題《ほうだい》……」
「うんにゃ、褒美《ほうび》の件は待ってくだせえ。あっしはあっしで、たった一つ欲しい物があるんだから」
盟約締結《めいやくていけつ》――はいいが、そこで弥生につれられてコッソリと森を出はずれた山椒の豆太郎が、ほっそりとした弥生のうしろ姿を、すぐ後からむさぼるように見入って、しきりに舌なめずりとともにひそかにうなずいたのを、弥生は気がつかなかった。
太夫のいないもぬけの殻へ、それとは知らずに必死に人を集める唐人|劉《りゅう》手裏剣小屋木戸番の声……。
こちらは二人。小暗い細みちを突っきると、森かげに生け垣をめぐらしたささやかな萱葺《かやぶ》き屋根が見えてきた。老士がひとり、戸口に立ってこっちへ小手をかざしている。
「彼家《あれ》だ」
弥生が、白い指をあげた。
さんざ時雨《しぐれ》
庭の木かげにチラと人らしいものの形をみとめたのは、土生《はぶ》仙之助が最初だった。
夜の、かれこれ五ツ刻だったろう。
本所法恩寺ばし前の化物屋敷、鈴川源《すずかわげん》十|郎《ろう》方では、あるじ源十郎と丹下左膳の仲が表面もとに戻って、源十郎はまたおさよ婆さんを実母のように奉り、相も変わらず常連をあつめて、毎晩のように、いわゆるお勘定をつづけているところ
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