になさるものでもござんすまいぜ」
「うむ。なに、いや、ただ気がせくのだ」
と弥生はできるだけ男のように大きくどっしりとかまえて、
「そこでどうだ? 仕事はまずいま申し聞かせたようなことだが、一つ拙者らと行動をともにして力をかしてくれる気はないか」
「さようですね」
仔細らしく首をひねった甲州無宿山椒の豆太郎、いろいろと心中に思案しているのかも知れないが、異様な眼色が依然としてなでるように、すんなりとした弥生の胴から腰のあたりを這いまわって離れないから、弥生はいっそう警戒しつつ、
「むりかも知れんが、拙者はその侠気を見こんで頼み入るのだ――どうかその手裏剣の妙術をもって拙者ら一味のために思うさま働いてくれ……」
「へえ。剣のほうじゃア本職のおさむれえさんに、そうまで厚くおっしゃられるたア、この豆太郎めも果報者で――へえ、このとおりお礼を申します」
「いや、いや、礼なぞ……受けてもらえば当方からこそ言うべき筋だ。いかがであろう、即答が得られれば幸甚なのじゃが」
「なあに、自分の口からこんなことをいうなあ変なもんだが、親の因果《いんが》が子に報い……なアんてネ、どこイ行ってもうしろ指をさされるとおり、身体は、どなた様がごらんになってもこんな不具だが、お前さまのまえだけれどこれで人間よくしたもので、何かしら取り柄がありまさあ。ねえ、あっしア餓鬼の時から物を投げるのが得意でね、好きこそものの上手なれ、へっへっへ、口はばってえことをぬかすようだが、あっしのこの手裏剣|業《わざ》と来た日にゃア、日の下開山、だれと立ちあったところで遅れをとるようなことア、金輪際《こんりんざい》げえせん。そりゃアもう皆さんが――」
「存じておる。存じておればこそ、かくまで膝を屈して願い入るのじゃ」
「さあ、そこだが……」
「なあ豆太郎どの、それほどの剣技をもちながら、あのような獣皮をかぶって唐人|劉《りゅう》などと偽称し、いたずらに衆人の前に立って女子供の機嫌を取り結ぶがごときは、いわばこれ宝の持ちぐされ――その方みずから惜しいと思ったことはないかな!」
「おっと! 待った! おことば中ながら、あの縫着《ぬいつけ》はけものじゃアげえせん、黒馬の尻尾を膠《にかわ》で貼りつけた別誂えの小道具なんで」
「馬のしっぼ! ははははは、なおさら悪いではないか……ま、さようなことはさておき、ここはどうあっても
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