絵に画く猩々《しょうじょう》そのままで、出て来た時から見物人のどぎもを奪ったのは当然、弥生はあやうく男装を忘れ、驚異の声を放ち眼をおおおうとしたくらいだった。
 まれに見る怪物!
 おびえた子供が、片すみで! ワッと火のつくように泣き出すと、劉はそっちを見てニコニコしている。
 割りに気はいいらしいので、皆もいささか安心して、すこし浮き足だったのが、またソロソロ舞台のほうへつめかけ出すと、
「唐のお女中の悪血が凝《こ》って、月たらずで生まれましたのがこの太夫、御覧のとおりのお化けながら、当年とって三十と九歳! 劉《りゅう》さん!……あいヨウ――」
 香具師《やし》がそばから披露《ひろう》をするのはいいが、自分で呼んでじぶんでこたえるのだから世話はない。
 そこで、お化けの劉さん、チョンと析《き》の頭《かしら》を合図に、たちあがって芸当に移った。
 舞台の片側に戸板が立てかけてあり、それにピッタリ背をつけて十二、三の女の児が直立する、と、数十本のピカピカ光る小剣を手にした劉、その少女から三間ほど離れた個所に足場をえらんで、小刀の柄を先に、峰《みね》を手のひらに挟んで構えるが早いか! 奇声とともに投げ放った本朝でいう手裏剣の稀法《きほう》!
 晧糸《こうし》水平《すいへい》に飛んで、発矢《はっし》! と小娘の頭に刺さった……と見る! 剣鋩《けんぼう》、かすかに人体をそれて、突き立ったので、仰天した観覧人たちがホッと安堵《あんど》の胸をなでおろす間もあらばこそ、二本三本とやつぎばやに劉の手を飛び出した剣。流れ矢のように空に白線をえがきながら、トントントントントン! と続けざまに、娘の首、わきの下、両うで、躯幹《からだ》、脚部と上から下へ順々に板に刺したって、それがすべて肉体とはすはす、一分の隙に娘を避けて板に突き立つものだから、こんどは一同、ふうッと感服の吐息をもらして、拍手することさえ忘れている。
 一刀を放つごとに、やッ! やッ! と叫ぶ劉、長い腕をぶんまわしのごとく揮《ふる》って、黒毛をなびかせ短身を躍らせているようすが、栗のいががはじき返っているよう――。
 まるでたたき大工が釘を打つように、またたくまに光剣をもって少女の輪郭を包んでしまった。
 茫然としている見物人のまえで、娘がソッと板から離れると、大手をひろげた少女の立ち姿が、つるぎの外線でくっきりと板のおも
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