だだっ広い板敷に三十人の破門連だけが車座に居残って、剣主軍之助から江戸入りを命ぜられている最中。
 いかさま東下《あずまくだ》りとしかいいようのない、仕度も仕度、たいへんな大仕度に、つづみの与の公、まずたましいを消さなければならなかった。
 わけも知らないのに、軍《いくさ》にでも出るような騒動――にわかの発足とあって、わらじを合わす者、まだ一寸も江戸へ近づかないうちから、刀を引っこ抜いてエイッ! ヤッ! と振り試みるもの、上を下へとごった返しているから、これを見た与吉が、ひそかに考えたことには、
「これほどじゃあるめえと思ったが、強そうには強そうだけれど、いやはやどうも、ひでえ田舎ッぺばかりじゃアねえか。ちょッ! あの服装はなんでえ! 覲番侍《きんばんもの》が吉原の昼火事に駈けつけるんじゃアあるめえし、大概《てえげえ》にしゃアがれッ!……といいてえところだが、待てよ! これだけの薪雑棒《まきざっぽう》に取り囲まれていけあ、たとえあの乞食坊主がいつどこで飛び出したところで、帰途の旅は安穏《あんのん》しごくというものだ――身拵《みごしら》えは江戸へはいる前にでもよッく話してなおしてもらおう。それまではこの田舎者の道あんない。まあ、何も話の種だ」
 とあきらめて、一同とともに打ちつれだって出て来たのだが、性来|粋《いき》がっている江戸ッ子の与の公、仮装行列のお供先を承っているようで、日光のかくかくたる街道すじを練ってゆくとなんとも気のひけることおびただしい。
 いまでさえこうだから、江戸に近づくにつれてその気恥ずかしさは思いやられる。どっちへ転んでも情けねえ役目をおおせつかったものだ! と、つづみの与吉、口のなかで不平たらたら……大きな肩に挟まれて木戸の宿場の登りぐち、虫の知らせか、進まぬ足を踏みしめて一歩一歩と――。
 かえりは、道をかえて水戸街道。
 常陸《ひたち》の水戸から府中土浦を経て江戸は新宿《にいじゅく》へ出ようというのだ。
 奥州本街道とはすっかり方角が違うから、二本松に残して来た蒲生泰軒に出会する心配はまずあるまい。また仮りに行き会ったところで、こんどはこっちのもの、与吉はすこしも驚かない。
 富岡より木戸。
 この間、二里の小石坂。
 いい眺望《ながめ》である。
 山に沿ってうねりくねってゆく往還《みち》、片側は苗木を植えた陽だまりの丘で、かた方は切り
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