》には委《まか》せられない。すぐにあちこち聞き合わせたのち、この人相書を作って、自分で江戸へ出て来たのだった。
 それから今日まで二タ月ほどのあいだ心当りを探ってみると、それらしい娘が江戸にいて、何を商売にしているものか、渡り者みたいに落ちぶれて次からつぎと質をおいてまわっていることがわかった。そこで甲府の家主が、片っ端から江戸じゅうの質屋を歩いてみると、寄ったところもあるし、寄らないところもある。ところが、ここにもう一つ不思議なことは、その女が立ち寄っておいたという質草が、いつもきまって同じ物だった――蝶々の彫りをした平《ひら》うちの金かんざし。
 どういう量見《りょうけん》で、どこへ持って行ったってあまり貸しそうもない金かんざしなどをぐるぐる[#「ぐるぐる」に傍点]方々の質屋へ出したり入れたりして歩いているのかわからないが、とにかく、行った質屋へは必ず蝶々彫り平打ち金かんざしを質において、二、三日して受け出しに来ている。その寄った質屋のあとを辿《たど》ると、どうやら品川からこっちへ来て、もうそろそろ[#「そろそろ」に傍点]このへんへ現われるころだというのだ。
「それで、ちょっと来て
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