んご》を釣る現場を明瞭《はっきり》見たとでも言いましたかえ。」
「めっそうな!」
「そんならいってえ、何を証拠《たて》に、お藤さんに疑《うたげ》えをかけたんですい?」
なんでも番頭の話では、お藤が店へはいると間もなく、そこにあった珊瑚が一つ失くなったことに気がついたので、店じゅう総出で探したが見当らないから、この上はと理解を付けてお藤を奥へ伴《つ》れて行き、一応身柄をさぐろうとしたら、お藤はその手を振り解いて泣きながら逃げ帰ったという。
「親分、身柄調べたあひどうがしょう。あっし[#「あっし」に傍点]もそこを言ってやりやした。瘠せても枯れても他人《ひと》の嚊《かか》あへよくも――。」
「でなにかえ伊助どん。そう追っかけてまで捩《ね》じ込んできたんだから、此家《ここ》で、お前さん立会《たちえ》えのうえで、改めて身柄しらべをしたろうのう、え?」
「へえ。」
「品物は、出やしめえの?」
「親分、それが出ねえくらいなら、お藤も死なずに済むはず――。」
「なに? てえと、出たのか。その珊瑚がお藤さんの身柄から出たのか。」
「へえ。」
「ふうむ。それからどうした。」
「それからあっし[#「あっし
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