でございますか」
「おれの妹になってもらいてえのだ」
「妹さんに?」
「そうだ。無代《ただ》でとはいわねえ。大枚の給金をやろう。妹料だ。どうでえ」
「そして、その妹さんに化けて、わたしは何をするのでございますか」
「何もするこたありゃあしねえ。ただおれの妹だといってすわっていりゃあいいんだ」
「そして、お前さまがおせい様から、お金をまき上げる種に使われるのでございましょう。おおいやだ! わたしにはそんな大それたことはできませんでございますよ。お断わり致しますよ。それに、さっきおせい様にお眼にかかりましたとき、わたしはお前さまの妹ではないと、はっきり申し上げたのでございますからねえ。そんなに、妹でなかったり、妹であったり――誰でもおかしく思いますよ。いやでございますよ」
「なあに、おせい様には、たとえ何といったところでおれの口一つで、あとからどうでもなるのだが、すりゃてめえは、どうあっても妹に化けるのはいやだというんだな」
「まあ、せっかくでございますが、お断わり致しますでございますよ」
「金になる口だぜ、おい」
「お金なんかほしかございませんよ」
「よし。そんなら、こっちもせっかくだが
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