の峰を、不自由な眼をほそめてながめていた。その若松屋惣七の顔はこのごろになくゆったりした表情だった。お高のほうを顧みて、微笑したようであった。お高も、ほほえみ返そうとしたとき、ぎいとお白洲の樫扉《かしど》があいて、大声に呼び込みがはじまった。
白洲には、白い砂が、高い窓の洩れ日に光っていた。つくばい同心が左右にしゃがみこんで、正面の高い座の下には、書役《かきやく》が机をならべてこっちを見ていた。一同が、そこで草履《ぞうり》をぬいでお先へお先へと譲り合っていると、
「早くはいれ」
扉《と》をあけていた同心のひとりがどなった。
砂にすわって待っていると、奉行の忠相《ただすけ》は、伊吹大作《いぶきだいさく》その他をしたがえて、すぐ出て来て座についた。一同が平伏しているとき、忠相は、ひとりちょっと顔を上げた木場の甚と眼を合わせてかすかにうなずいたが、誰も気がつかないのだ。
名や所の読み上げがすむと、忠相の調べは早かった。現代《いま》でいうと、超速度だった。
事件は、おもて向きはお高の入水の一件だったが、忠相は、それを取り上げて、この紛糾のすべてを快刀乱麻的に解決しようとする肚《はら》
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