のところはお高を見るために過ぎなかったのだが、若松屋惣七とお高の仲と、ことに惣七に寄せるお高のこころもちを知ると、龍造寺主計は、じぶんの気もちなどはすぐ忘れて、晴ればれすると同時に、お高への同情が、そのがっしりした胸に雲の峰のように沸き起こってきた。
それは、龍造寺主計において、自然すぎるほど自然な転化だった。そのお高に対する同情は、いま、お高の財産ゆえにお高の恋を退けようとしている惣七への憎しみでもあった。
この二つは、龍造寺主計にとって、同じ感情であった。そして、龍造寺主計のあたまの中で、同じ度合いと速力で進んだ。お高が可哀そうになればなるほど、若松屋惣七が憎らしくなった。
龍造寺主計は、この、自分でも不思議な義憤に悩んで、隠れていることを忘れて、障子のかげでしめった。それはさいわい室内の二人には聞こえなかったが、龍造寺主計は、あやうく声に出していうところだった。
「意地もよいが、わからんことをいわるる惣七どのじゃな」
部屋のはなし声はつづいていた。龍造寺主計は、板縁に釘《くぎ》づけになったように、脊骨をまっすぐにして聞き入っていた。
いっているのは、若松屋惣七の声だ。
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