歴の龍造寺主計は、見ていると面白いほど、相手と場合によって、侍《さむらい》になったり宿屋の亭主になったりして、それがまた、何ら不自然な感じを見せずに、二つの性格を生きているようすだった。
若松屋惣七が礼をいうと、そのときは龍造寺主計はすぐ武士に立ち返って、
「なあに、おれには何もできはせぬ。これもすべて、江戸の若松屋惣七がいよいよ真剣に乗り出したという評判が立ったからだ。いわばお主は、江戸にいて、この掛川の具足屋を生かしたのじゃ」
などとあっさり謙遜《けんそん》して、相手を立てた。それからこれは述懐らしく、しんみりいった。
「武道と商道は一致するものだな。どちらも気ひとつである。硬きがごとくして軟《やわら》かく、柔らかきがごとくして固く、つるぎをとる要領で算盤《そろばん》を持つのだ。剣をとるには、濡れ手ぬぐいを絞るようにやんわり持つ。そろばんを手にするにも、このこつが第一だ――ということを、なに、このごろ発見したばかりじゃ。あはっははは」
とつるりと顔をなでて、もう何をいったか忘れたようにすまし返ったのだが、そのようすをぼんやり網膜へうつして、若松屋惣七は、相変わらずの龍造寺主計
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