「――」
「つぎに祭である。もってこいじゃ。そのおやじは香具師《やし》の縄張《なわば》りなどにも顔のきくところより、日本一太郎を後見し、自ら太夫元《たゆうもと》となって祭の境内に一小屋あけるな」
「――」
「日本一太郎とは、はじめから手はずがついているのじゃが、待てよ、その日本一太郎は、昔しりあいの女子《おなご》に会うて、それがまた娘の良人にたぶらかされたと聞いて、こりゃ怒りを大きゅうしたかも知れぬな。むりもない。
いよいよ、おやじめと取り決めた計略を行なわんと、いっそうこころをおどらして、それとなく、娘の夫なる者にも来観を依頼する」
「――」
「その者は、己《おの》れの手先、おのれの味方と信じておるから、謀《はか》られるとは知らず、大いによろこび、総見の気で、女子ふたり引きつれて初日に出かけたといたそう。筋書きどおりに、火を失したな。しかも、その者は筋書きどおりに焼死いたしたのじゃ、さすがは日本一の手妻じゃ。日本一、日本一、面白いぞ」
「恐れ入りましてございます」
「何も、そちが恐れ入ることはない」
「いえ、恐れ入りました」
「そうか。恐れ入ったか」
「恐れ入りました。が、二つほ
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