どうぞ。承《うけたま》わりとうございます」
「日本一太郎は、死んだのじゃ。近く死ぬようなことを申しておったに相違ない。死んだことにしておけ」
「は」
「死んだほうがよいのじゃ。高とやら申す、その娘のためにも」
「なぜでございましょう」
「父らしゅうない父であったことを今さとって、恥じているからじゃよ。しいて愛情を殺して、娘にもよそよそしくしておったことであろう。娘の妨げにならんように、身を隠したかったに相違ないな。
 死んだものじゃ。すておけ、すておけ。身を殺し、また、娘の悪夫を殺して俗に申す腐れ縁、それから娘を解き放したのじゃよ。見上げた分別じゃ。ほめてやれ。が、ほめてやりとうても、仏であったな。あははは、拝んでやれ」
 木場の甚はにっこりして、その笑顔を隠すためのようにうつむいた。が、忠相は、すばやくみつけて、
「笑いおるな、そろそろ参るぞ。よいか。ここにひとり、白髪《しらが》あたまの、他人《ひと》の頭痛を苦に病むことを稼業《しょうばい》にしておるおやじがおると思え」
「へ」
「日本一太郎と計らって、はじめから筋を編んだな」
「――」
「まず、日本一太郎の手品というに眼をつけたな」
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