ろうが、この取るに足らない市井の雑事こそは、奉行越前守にとっては、天下の一大事であった。
 市井の些事《さじ》、奉行職の眼からはすなわち天下の一大事とみているのが、忠相であった。忠相は、何となくこの磯屋の一件が気になった。それは何も、表立った白洲《しらす》にかかっているわけではなく、どこといってつかまえどころのない、底にうごめいている暗流のようなものであったが、忠相は、そこに、早晩何らかの形で、事件として持ち込まれてくるであろう可能性をみたのだ。関係人物の立場とうごきとからみて、当然破裂しなければならない運命を予知したのだ。
 法は、法を用いざるをもって最上とし、取り締まりは、取り締まる必要のないように、ことを未前にふせぐのが、その任にあるものの分別である。忠相は、磯五のことが気になって、それとなく気をつけながら、おもて立った事件にならないうちに、何とか解決をつけようと試みたのだ。暗《やみ》から暗へ処分しさって、お白洲の砂のうえに持ち出させまいと考えたのだ。持ち出さなければならないにしても、その持ち出されたときには、できるだけ簡単なものになっているようにしたいと思った。
 忠相は、早く
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