した奸悪《かんあく》な手段にまで言及したもので、完膚《かんぷ》なきまでに磯五をやっつけたものであった。
 第二の久助の訴状は、じぶんの娘のお駒と磯五の関係、磯五とおせい様の仲、おせい様をいいようにして金をせしめようとしている磯五の手段など、それも、色悪《いろあく》としての磯五の正体をむいたものであった。
 第三の一空和尚のは、若松屋惣七方の女番頭お高という女が、名義上磯五の妻ということになって縛られていて、そのため再縁はもとより、思うままに暮らすこともできず困っているからなにとぞお上の力でその縁を切って、お高を自由にしてもらいたいという、やはり色事師らしい磯五の悪辣《あくらつ》さを突いた文面であった。
 目安箱は評定所|五手掛《ごてがかり》の管轄で下役がひらいて、取るに足らないのはそのまま取りすててしまうのだが、あまりこの磯屋五兵衛という人物に関して重ねて投書があるので、取り上げになるかならないか、そこらの裁断を越前守に一任するとともに、三通の書き物をまとめて、そのまま南町奉行のほうへまわしてよこしたのだ。いわば市井《しせい》の雑事で、五手掛の役人は、もちろんとるに足らないと思ったのだ
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