から、この式部小路と、金剛寺坂と拝領町屋をつないで、うごく推移に、眼を凝らしてきたのだ。じっと、遠くから見守っていたのだ。すべての小事件、すべての人の動き、それらはみな、いながらにして忠相の知るところだった。目前に鏡をかけて遠景を映して見るように、忠相は何もかも知っていたのだ。
 そのために彼は、三人の人物を使ったのだった。ひとりは、手附《てつけ》の用人伊吹大作の弟で錦也《きんや》であった。錦也は梅舎錦之助《うめのやきんのすけ》と偽名して、一時お駒ちゃんの情夫となり、それとなしに磯五の人物、策動、磯屋の内幕などをさぐり出した人であった。
 これは御用の役人といえば役人であったけれど、他の二人は、全く私人関係で、忠相に頼まれてうごいた人たちだった。ひとりは若松屋惣七の従妹の歌子で、もう一人は、若松屋惣七と歌子の親友である紙魚亭主人の麦田一八郎であった。

      三

 はじめ忠相は、若松屋惣七の身辺に近い者を求めて若松屋惣七の側から、惣七を通して、磯五を探ろうと考えて、若松屋惣七の縁辺を物色して、歌子を得たのだ。
 歌子は、惣七の利益《ため》になることなので、すぐ引き受けたのだった
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