すぼらしい装《なり》で江戸の町から町とほっつき歩いていたのだ。
父娘《おやこ》といってもいいほど年齢が違うのだから色の恋のという間柄ではもちろんないのだが、それにしても、今、お駒ちゃんが磯五にもてあそばれてすてられたと聞いたときに示した、あの日本一太郎のおどろきは、何を意味するものであろうか。このおじいさんとあの人とのあいだに、どんないきさつがあるというのだろう?
お駒ちゃんは、それが気になってたまらなかったが、相手が、磯五との関係はそれとなく隠しておきたいようすなので、ざっくばらんにきくわけにもいかなかった。そして、ざっくばらんにきくのでなければ、口うらを引くなどという器用なことはできないのが、お駒ちゃんなのだ。で、黙って日本一太郎について、その、ぎしぎしいう裏梯子《うらばしご》を踏んで木の腐ったようなにおいのする風呂場へおりて行った。
安宿にふさわしいきたない風呂場だ。泊まり客もすくないし、まだ午後もそうおそくなっていないので、ほかにはいっている人はなかった。二人きりだった。
じめじめした板の間に着物をぬいで、木の引き戸をあけると、一坪ほどの、土の黒く固まった土間に、田舎び
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