くむくして見えているのだ。女は、鼻緒は手におえないと知って、そこに落ちていた縄ぎれで草履を足にしばりつけて歩き出そうとした。
 それは、お駒ちゃんであった。お駒ちゃんは、つぶらな眼をそわそわと動かしたが、じぶんを見ている日本一太郎には気がつかずに、そのままみすぼらしい身装《みなり》を恥じるように、軒下づたいに歩き出そうとした。
 老いた日本一太郎の顔に、よろこびの色がうかんで、彼は、足早に追いすがりながら、声をかけた。
「おい、お駒太夫じゃあねえかい」
 お駒ちゃんは、悪いことをしていたところをみつかりでもしたように、ぎょっとして立ちどまって、ふり返った。
「あら、誰? おや、日本一のおじいさんじゃあないの」お駒ちゃんは狼狽して「いやだよ。へんなところで会ったねえ」
「そっちはへんなところかもしれねえが、こっちは何も、へんなところではねえのだ。おいらはいま、そこの両国の小屋にかかっていて、これからついそこの藤代町のとやを帰《けえ》るところなのさ。それはそうと、久しぶりじゃあねえか」
「ほんとに久しぶりだねえ。あれから」
 と、お駒ちゃんは遠いところを見るような眼になって「何年になるかし
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