なかった。やっぱりいざとなると行けないでぐずぐずしているうちに、日がたっていっそう行けないことになったのだ。
 若松屋惣七は、もう掛川へ着いて、お高を待っているに相違なかった。
 お高は佐吉を供につれて行くことになっていたので、佐吉は一日に二度も三度もお高の部屋へ顔を出して、いつ発足するつもりかとききに来た。お高は、行く気のないところへ、そういってこられるのが、苦しかった。それよりも、掛川で待っているであろう若松屋惣七と龍造寺主計のことを考えると、いっそう気が重くなって、そうやって逃げるように延ばしていることさえ、苦痛になった。
 お高は、若松屋の留守の者にはゆき先を告げずに、そっと拝領町屋のおせい様の家《うち》に隠れてしまったのだ。

      四

 駒留橋を渡って、藤代町の宿へ帰ろうとするところで、日本一太郎は、足をとめた。路《みち》ばたにしゃがんで、切れた草履の鼻緒《はなお》を、一時しのぎに何とかつくろおうとしている女の横顔に、眼が行ったのだ。
 若い女だ。色あいの派手な、しかしよごれ切った衣裳を着けて、腰を二つに折っているので、太腿《ふともも》のあたりの肉が、着物のうえにむ
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