《うち》へ帰ってくると、一空様からの使いが、お高と木場の甚を待ち受けていた。使いの小僧は、一空さまの手紙を持って来ていた。うけ取って、巻き紙を吹き流しにして黙読していた甚が、手紙のうえから、その鋭い眼をお高へ走らせて、
「おどろきなすっちゃいけませんぜ」かわったことをしらせる人の、ゆっくりした口調で、「一空さまからいってきているのです。父御《ててご》の相良寛十郎さんがめっかったというのですよ。やはり、生きていなすった。ここの古石場で死んだ、あの相良寛十郎てえ仁《ひと》は、あれあ、おとっつぁんじゃあなかった――」
三
「わたくしのおとっつぁん――」お高は、金魚のようにあえいで見えた。「わたくしのおとっつぁんの相良寛十郎は、親分さんが始末をしてくだすって、立派に死んでおりますでございます」
「さ、それがです。なるほど、お前さんが父御《ててご》と思いこんで仕えてきた相良さんは死んでいる。が、一空さまのいうのは、おゆうさんの良人の相良さん、お前さんのほんとの父親の相良さんですぜ。証人に出て来た、お前さんの乳母てえ人の話でも、別人なことはわかっているのです。
何でも、ここに書い
前へ
次へ
全552ページ中447ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング