り》とかで、一空様という坊さまが、一度その用でみえられただけでございます」
「が、まあ柘植の金だけは、木場の親方のほうに積んであるのだから、いつ誰が出て来ても渡せることは、渡せるわけで、そのへんのことはいいのだが――」
「ほんとに固くしていられたので、柘植の者も大喜びでございましょう」
 寄り合いの者たちはざわめいて、あちこちでこのお高のうわさをしているらしかった。そこへお高が、はいって来た。お高は、深川の木場の甚と、ほか二、三の人たちに取りまかれて、上気したような顔をみせていた。多勢の視線に困って、どこへすわっていいのかまごついているようすだった。
 やがて、木場の甚と伊之吉があいだに立って、お高と与兵衛との話になったのだが、お高が柘植の当主として和泉屋の根を押えていることは既定の事実なので、与兵衛も何もいうことはないのだった。集まっている者たちに何もいうことのないのは、もちろんだった。
「さぞいろいろと苦労なすったことでございましょうが、これであなたも芽が吹き、おっかさんもあの世で安心しておいでなさることでございましょう」与兵衛は、こんなことをいうよりほかなかった。「このごろは日和
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