した分別盛りだ。
 実際、近来の和泉屋がふとるばかりなのは、この与兵衛がふとらせてきたのだといっていい。
 与兵衛はきょうはいらいらしている。二十人ばかり寄り合っている者たちを、にらむように見すえながら、伊之吉に話しかけた。
「柘植の娘のほうが、いよいよ眼鼻がついたらしい。どこまでが柘植の和泉屋で、どこからがその後の和泉屋か、そこらが分明せんことには、いざとなると、当方も話が進めにくいでな。どうも困ったことになった」
 伊之吉は腕をくんで、黙って与兵衛を見ている。与兵衛が、つづけた。
「いま蔵やら荷置き場を、人をつけて見せてまわっていますが、そのうちここへも見えるでしょう」
「そういたしますと、もとの和泉屋の分だけは、その娘さんのほうへ返しますことに、もう決まったのでございましょうか」
「はい。きまりました。木場の甚さんが一応いろいろと疑って調べてみたのだが、確かに柘植のおゆうさんの娘御に相違ないというのだ。大変なことになりました。一時にとほうもない女分限者ができてしまった」与兵衛はにっこりして、
「お前は会ったことがあるのかね、そのお高という娘に」
「いいえ。何でも柘植の親類《つなが
前へ 次へ
全552ページ中442ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング