う」
「いいえ、あきらめていらっしゃることはあきらめていらっしゃるのですけれど、でも、眼に見ると、毒でございますよ。気が迷って、苦しくなりますでございますよねえ」
「うむ。そうじゃ。磯五め、何しにここへ来たのかな」
「ほんとに、何しに来たのでございましょう」
広い屋敷だ。若松屋惣七に別れて、お高がひとりでおせい様の部屋へはいって行くと、おせい様は、見たくもない磯五が、突然訪れて来たのに動揺を感じて、紙のように白い顔だ。といって、ああして慣れなれしく来ているものをたたき出してやるわけにもいかないので、おせい様は、みじめに困惑しているのだ。くちびるをおののかせてお高を見上げたきり、意味の不明な微笑で頬をゆがめた。
お高も、恥知らずといおうか、ずうずうしいといおうか、磯五という人間に、口もきけないほどいよいよあきれ返っていて、すぐには磯五のことを話題にできなかった。
「知らん顔していらっしゃいましよ。ああいう人には、それが一番いいのですよ」
お高がそういうと、おせい様は、泣き出しそうに口をそらして、それでもにっこりした。
お高は、心からおせい様をあわれに感じた。
二
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