すててうしろに飛びさがっていた。同時に、手にしていた自物木《しぶつぼく》の杖を青眼にとって、にやにや笑っていた。そして、
「あぶない、あぶない」
 といった。
 それは、磯五のことをあぶないといったのか、自分のことをあぶないといったのか、磯五にはわからなかったが、仕損じたことだけは確かなので、磯五はいらだった。
 すぐ追い迫ろうとしたけれど、鼻の前へ来て生き物のようにびくびく微動している杖の先が、ひどく邪魔になった。その一本の曲がり木が、磯五には、巾《はば》の広い板のように見えて、若松屋惣七のすがたが隠れてしまうような気がした。その向こうに、蒼い若松屋惣七の顔がほほえんでいた。髪に引きつられたこめかみに太い筋がはっているのが、不思議に、磯五にはっきり見えた。
 人が来てはだめだと気がついて、磯五は、片手で杖をつかんで、今度はしゃにむに突いて行った。しかし棒をつかもうとすると、その棒が激墜してきて、磯五のききうでを強打した。磯五は、その腕を抱きこむようにして、地べたにころがっていた。
 短刀が、若松屋惣七のあしもとへ飛んで行って、若松屋惣七に拾われた。磯五は、腕《て》の苦痛を訴えて、うな
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