、すぐいった。
「おめえに眼をかけてくださる大家《おおや》の坊っちゃんてえのは誰だ」
「大家なんかと町人みたいにいわれちゃお刀が泣くよ」お駒ちゃんは、威勢よく答えかけたが、気がついて、びっくりした。「おや、いやだねえお前さん、どうしてそんなことを知っているの?」
「どうして知っていようと、大きにお世話だ。何でも知っているのだ。そうか、さむれえか」
「さむれえもさむれえ、梅舎錦之助《うめのやきんのすけ》さまとおっしゃって、れっきとしたお旗本の御次男ですよ」
「芸人みてえな名だな」
「芸人みたいな名でも芸人ではないのですよ」
「部屋住みか」
「部屋住みだっていいのですよ」
「いくら部屋住みでも、料理人《いたまえ》の娘っ子を相手に、色の恋のとぬかしていると知ったら、さぞ喜ぶだろうなあ。おめえは下女奉公か、おででこ芝居にでも出ていりゃあちょうどいいのだ」
お駒ちゃんはたちまち紙のように白くなったが、久助とじぶんとのつながりがすっかり知れているらしいのであきらめて、ただもし磯五がその梅舎錦之助に、お駒が料理番の娘であることをばらすなら、じぶんはおせい様のところへ走って、磯五が、妹でも何でもない
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