はいって計画がこわれたのが残念であった。が、取るものは十分取ったのだし、考えてみれば、惜しくもないおせい様なのだ。磯屋の店は、もう基礎《いしずえ》がしっかりすわっていて、大丈夫だ。
磯五は、駕籠に揺られながら、若い女《もの》のようにはゆかないおせい様のからだを思い出して、きたないお勤めが済んだように、駕籠のそとの地面へぺっぺっと唾《つば》を吐いた。
式部小路の店へ着いて、すぐお駒ちゃんを呼ぼうとしたが、お駒ちゃんは留守であった。先日からお針頭に住みこんでいるおしんが来て、芝《しば》と神田の祭礼で大口の注文があったと告げたので、磯五はますます上きげんになった。
「それでは、いつぞやの染めのこともあるし、私は一両日中に発足して、ちょっと京表のほうへ行って来ようと思うが――」
いっているところへ、お駒ちゃんが帰って来たとみえて、店のほうできいきいいう声が聞こえた。果たしてお駒ちゃんであった。お駒ちゃんは、流行《はやり》の派手な衣裳を着けて、のぼせて、真っ赤な顔をして、磯五のいる奥の小座敷へはいって来た。今までふざけ散らして来たとみえて、眼がうるんで光っていた。
磯五は、苦い顔になって
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