って、自分は、お高の生きていることを知らなかっただけだから、べつにおせい様をだましたわけではないと、美しい顔にあらん限りの魅力を見せてもう一度おせい様をごまかそうと努力した。
 おせい様は、うっかりそれに釣り込まれて信じようとしたが、すぐに思い返して、
「とにかく、この家《うち》を出て行っていただきましょうよ。あなたのようなお人は見るのもいやでございますよ」
 磯五は、にこにこしていた。
「そうですか。それで、お高はどうするのですか」
「お高さんはわたしのお友だちですもの、当分ここに遊んでいてもらうつもりですよ」
 立ち上がりながら、磯五がいった。
「いや、何といっても、あれはわっしの家内ですからやはりいっしょになりましょう。それが一番いいのです。そうして今度は、仲よくやってゆきましょう。どう考えてもこれが穏当ですよ」
 それは、おせい様にとって、このうえない残酷なことばであった。磯五は、そこをねらって射ったようなものであった。磯五は、おせい様が泣き出しそうな顔になるのをちょっと見て、にっこりして座敷を出て行った。
 おせい様は、あんな男に、自分のすべてをやったのだと思って、ひとりで泣
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