おせい様が磯五の弁巧にだまされるにきまっているから、お高は、わざと知らぬ顔をして動かなかった。
そのうちにおせい様に問い詰められて、磯五は、曖昧《あいまい》に事実を承認したような、しないような口ぶりをとったので今度は、おせい様のまえで、名ばかりの夫婦のあいだの口論になった。お高は、それをいやだと思ったが、磯五にいい負かされるのはなおいやであった。
磯五のいうのは、夫婦であることはほんとうだけれど、夫婦であって、こうして夫婦でない生活をしているのは、すべてお高が悪いからで、だから、つまり夫婦ではないというようなことだった。この黒を白といいくるめようとするようないい草が、磯五の口から出てくると不思議に道筋立って聞こえて、どうかすると、お高が受け太刀《だち》になるようなぐあいであった。お高は、くやしくなって、半ば泣きながら部屋を出てしまった。
あとで磯五は、舌に油をくれて一切の間違いをお高にかぶせようとしたが、おせい様は、もうすっかり眼がさめていた。磯屋につぎこんだ金はつぎこんだ金として、これできれいに別れようではないかといい出した。磯五はお高のほうが勝手なことをして逃げたのだといい張
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