われてきたのでございますよねえ」
「善人はみんな蔭で人に嗤われるものでございますよ。それでよいのでございますよ」
 そこへ縁に影がさして、人がはいって来た。それは磯五であった。磯五は、女中が金魚売りから金魚を買ったといって、それを見に来ないかとおせい様を呼びに来たのであった。おせい様は、びくっとおびえたように黙っていた。お高が、大きな声でいった。
「わたくしですよ。お高でございますよ。また参りました。いまおせい様に、お前さんがあたくしの良人になっているとお話ししたところですよ」
 おせい様は、じっと磯五を見上げた。磯五は、ちらっと二人の女の顔を見くらべて、にッと笑った。そしてふたりのあいだに割りこむようにすわった。お高が、同じことばを繰り返すと、磯五は、声をたてて笑った。笑いの途中で、おせい様の声がした。
「笑うことはございませんよ。何かおっしゃることはないのでございますか」
「何もありません。このお高のいるところでは、なにをいうのもいやなのです。おせい様一人にゆっくりお話ししてえのですよ」
 おせい様は、座をはずしてくれというようにお高を見たが、おせい様と磯五と相対ずくになれば、また
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