くちびるをかんで、思わず、ほそくうめいていた。無意識のうちに、決然とした態度になっていた。彫り物のように硬直したお高だ。
「わたくしはもうあなた様をおたぶらかし申すことはできません。わたくしは、磯屋の家内でございます」
白い拳《こぶし》
一
お高が、自分は磯五の女房であるとおせい様に打ち明けると、おせい様は、初めはほんとにしなかった。おせい様は、すわったまま、がっくりくずれて、真っ赤な顔になった。それから其っ蒼な顔になった。お高は、今までおせい様をあざむいていたことを詫びたが、おせい様は、そんなことはどうでもいいのだった。すっかり打ちのめされて、迷児《まいご》のようになったおせい様であった。
お高は、大阪の若竹の一件をも話してやった。するとおせい様は、磯五の側にまわって、何やかやと磯五のために弁解しようとするのだ。お高がいっそう口をきわめて、磯五がうそつきであること、女たらしであること、金のほかに生きる目的のない人間であることなどをいい立てると、おせい様は、洗われたように白い顔だ。なみだを浮かべていうのだ。
「わたくしは、みんなに蔭《かげ》で嗤《わら》
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