行っていて、気分が悪くなって中座したことがあったげな。なに、このごろは達者さ。式部小路の家に、ぴんしゃんして働いているよ」
「さようですかい。それは結構でございます」
 久助は、こころから安心したように、そういって立って行った。そのうしろ姿を見送って、磯五は、何だか気の許せないおやじだと思って、近いうちに、おせい様を焚《た》きつけてこの久助を追い出すことにしたほうが、今後のためによくはないだろうかと考えた。久助を警戒する気もちが、急に地水《じみず》のように、つめたく磯五の胸にわきかけたのだ。

      六

 が、久助がお駒ちゃんの父親であることは、磯五にすぐわかってしまったのだ。
 妻となっている高音と、絞れるだけさんざん絞っている後家さんのおせい様とが、こうして一つ屋根の下にいて、だんだん親しくなりつつあることは、両方から両方へ好ましくないことが伝わりそうで、磯五は、いてもたってもいられない気がするのだ。
 で、久助が立ち去って行ったあと、磯五がもう一度、手まくらで横になろうとすると、その膝の近くに一通の書面が落ちているのだ。これは、いま久助が落として、気がつかずに行ったものに
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