あろう。ほんとの相良寛十郎は、いったいどこへ行ったのであろうか。彼にも、おゆうの財産の中からわけられるべきものが、木場の甚の手もとに待っているのに、あれほど金ずきの男が、どうしてそれを受け取りに姿を現わさないのであろうか。これには何かふかい秘密がなければならない。
一空さまと木場の甚は、顔を見合わせて、とにかく、木場の甚がお高に会ってみることに、はなしが決まった。
お高は、雑司ヶ谷へ行ったきり、まだ帰って来ていないのだ。国平だけがぼんやり帰って来て、お高さまはどこへ行ったか、じぶんが庄之助さんのところで酔いつぶれて眠《ね》ているあいだにいなくなっていたといったので、若松屋惣七をはじめ、屋敷はさわぎになっていた。
一空さまは、それは何とかしてお高の手へ届くであろうと、何しろ、大急ぎのことなので、ただ簡単にいきさつをしたためて、即日飛脚に持たせて九老僧の庄之助さんの家へまで走らせてみた。お高に、すぐ帰って来て、ふか川の木場の甚に会うようにというのだ。
この書状《てがみ》を、磯五がひらいたのだ。
五
飛脚は、はじめ庄之助さんの家へ行くと、そこで、お高が急病になって、
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