おったようだが――」
「和泉屋は、そのなかのほんの一つでございます。ほかにも地所家作をはじめ、いろいろございますですよ。それはそれは、大変な財産でございます。そこで何にも知らずにいて、これだけのものをごっそり手に入れる娘さんは、いくらもともと母から譲られた自分のものとはいえ、たしかに日本一の果報者に相違ねえと、あっしは申すので」
なるほど、それに相違ないのだった。一空さまは、小石川の金剛寺坂に、若松屋の雇い人になっているお高の現在を思い出して、いったいどういうことばでこの吉報を伝えたものであろうかと、老《お》い胸がわくわくするのを覚えた。
ただ、相良寛十郎のことが、どう考えても腑に落ちないのが、二人は気になってならないのだ。
おゆうの良人としての相良寛十郎は、一空さまも木場の甚も識っているので、人相|風貌《ふうぼう》などを話し合ってみると、完全に一致するのである。こうなると、お高の父として死んでいった相良寛十郎は、お高の話で一空さまが考えたとおり、また木場の甚が現に眼で見たように、同名を名乗っていた別人であったということが確定されるのだ。
何者が何のために換え玉になっていたので
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