地主のおせい様の寮へ引き取られていると聞いたので、すぐその足で、裏手の田んぼごしに樹立ちに囲まれて見える、その雑賀屋の寮というのへ駈けつけた。
 この、飛脚が駈けつけて来るところをみつけたのが門口に立っていた磯屋五兵衛であった。
 磯五は、ひとりで門ぎわに立って、考えていたのだ。考えながら、門と玄関のあいだをいったり来たりしていたのだ。夕方近かった。お高は、奥の八畳の間に床を敷いて寝かされて、おせい様が看病をしていた。
 磯五はあれこれと思案すればするほど、いらいらしてたまらないのだ。何とかして早くおせい様から引き離して、江戸へ帰すようにするか、さもなければ――と、ここまで突きつめてくると、彼は、ただ、ぴくっと影のようなものにおびえるだけで、そこから先は、どうにも思案が進まないのだ。
 そこへ飛脚が、一空さまからお高へあてた書面を持って来たので、磯五は、じぶんがお高のところへ持って行くといって、受け取った。そして、飛脚には、いくらかの銭《ぜに》を握らせて、これで、どこかそこらで一ぱいやって休んで行くようにと追い帰した。
 磯五は、その手紙の両面を兎《と》見こう見しながら、内玄関からはい
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