から若い衆が返事の手紙を持って来て、神田鍛冶町《かんだかじちょう》二丁目の裏に当たる不動新道《ふどうしんみち》の和泉屋が総本家だと知れたので、これからそこへ出かけて行こうとしているところだ。
 出かけて行って、どう切り出したらいいか。一空さまは、それを考えていた。が、それはそのときのことにしようと決心して、はだしに高下駄を突っかけて金剛寺の楼門《さんもん》を出た。微風が、お衣の袖にはらんで、一空さまは、爽々《そうそう》と歩いて行った。一空さまが、通新石町《とおりしんこくちょう》から馬鞍横町《ばくらよこちょう》へ折れて、小柳町《こやなぎちょう》、鍋町《なべちょう》東横丁《ひがしよこちょう》と過ぎて不動新道へはいると、和泉屋の総本店はすぐ眼についた。
 左側の大きな老舗《しにせ》だ。やはり日用の雑貨をひさぐ店なのだ。
 一空さまは土間に立って、立ち働いている番頭手代を見まわした。そのうちのひとりに、ちょっと話したい用があるというと、それは伊之吉《いのきち》という大番頭であった。伊之吉は一空さまをじろじろ見たのち、急に愛想《あいそう》よく招じ上げて、店の裏の小座敷へ案内して行った。そこは、畳
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